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作詞講座第二章 叙事詞はたいやきに学べ 8

歌は感情移入のしやすい芸能です。

それは、歌は誰にでも再現できるからです。もちろんここでは、うまいへたは関係ありません。

芝居は簡単に再現できません。ある芝居のある主人公に共感したとしても、台詞を覚えるのは至難の業でしょう。まして、相手役はいません。

歌舞伎などの名台詞を覚えている人はいるでしょうが、歌ほど一般的ではありませんし、誰にでも気軽にできることでもありません。

歌の再現は、はな歌という形で歩きながらでも、風呂に入りながらでも、トイレに入りながらでも、酔っぱらって電信柱にしがみつきながらでもできます。

歌の詞は芝居の台本のように長々と物語を書くことはできません。

しかし、聴き手の感情移入とそこから起きる想像力を利用して、「物語」を成立させることができるのです。

それゆえに、主人公の設定をあまり限定してしまうと、聴き手が感情移入しにくくなるという問題が生じます。

ある程度の曖昧さが、聴き手の想像力を刺激するのです。ポピュラーミュージックにおいて、叙事詞が成立しにくい要因の一つがここにあります。

芝居の楽しみが「覗き見る楽しみ」であるとすれば、歌の楽しみは「参加する楽しみ」なのです。参加を要請するのに制約が多くてはいけません。

例えば、特別な経験をした人を主人公に一人称で書かれた歌がそれにあたります。

太平洋をヨットで単独横断した人を主人公に一人称で書かれた歌があるとしましょう。主人公である私は「ヨットの修理」や「無線の故障」のつらさを訴え、「通りかかった貨物船からの激励」や「横断した時の喜び」を歌い上げます。こんな歌を聞かされても聴き手は感情移入のしようがありません。

もちろん、このような題材でも聴き手の共感を得る歌をつくることは可能です。しかし、そんな題材を選んでヒットする歌を作った人がいないのは明らかです。

多くの人が共感しやすい題材を選んで、参加しやすくするのがポピュラーミュージックの王道なのです。


作詞講座第二章 叙事詞はたいやきに学べ 9




by フリーダムミュージックスクール・東京高円寺作詞講座作詞教室

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