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作詞講座第二章 叙事詞はたいやきに学べ 22

この歌はもともとテレビの子供向け番組の中で歌われたものです。それが、世代を超えサラリーマンにまで歌われるようになりました。

大人の鑑賞にたえることができたのも聴く人それぞれが、さまざまな感慨をもって聴けたからです。

サラリーマンのおじさんたちは、この歌に自らを重ね合わせて、酔っぱらい、大声で歌っていました。

最後にはもとのさやに収まって食べられていくたい焼きは、社会に対しての不満と息苦しさを感じつつ、年功序列と終身雇用という神話の中で、現状を受け入れているおじさんたちだったのです。

それは、自民党の一党支配を支えていた社会観と同質のものです。

「今の社会色々と不備はあるだろうけど、日本はこんなに豊かになっているんだから、波風立てることはないよ」という価値観に支えられて、この歌は人々に受け入れられたのでしょう。

この歌が化け物のようにヒットしたのには、幾つかの理由があります。

歌詞とそれを支える曲の完成度の高さ、歌手の歌唱力、そして、時代との相性です。

どんなにすばらしい作品でも時代に愛されなければ売れないことは、ゴッホの例を挙げるまでもないでしょう。

特に、歌は絵画や彫刻と違って、多くの人の支持を得なければなりませんから、時代の支持=大衆の支持がなければ売れません。

偶然と必然が手をつなぎ『およげ!たいやきくん』を作り上げたのです。

『およげ!たいやきくん』が突然変異的名作であることは間違いありません。

しかし、突然変異をするためには、変異する作品が、あるいは伝統が、それ以前になければならないのも事実でしょう。

日本には唱歌という形で、民話をもとにした歌が数々作られています。この歌が寓話であり、子供向けに作られたことを考えると、民話をもとにして作られた唱歌の伝統が『およげ!たいやきくん』へと繋がっていったと、考えられます。

民話をもとに作られた唱歌を『日本唱歌集』(堀内敬三・井上武士編 岩波文庫)からみていきましょう。

『キンタロウ』『モモタロウ』『さるかに』『うらしまたろう』『はなさかじじい』『うさぎとかめ』『一寸法師』『牛若丸(明三四)』『牛若丸(明四四)』『桃太郎』『浦島太郎』

『モモタロウ』と『桃太郎』『うらしまたろう』と『浦島太郎』は当然違う作品で、現在知られているのは両方とも漢字表記の作品です。『牛若丸』も二作品あり現在知られているのは明治四四作の文部省唱歌の『牛若丸』です。

ここで、すべての歌詞を検討することはこの章の主旨ではありませんので、これらの唱歌からわかることをまとめて述べていきましょう。

これら民話をもとにした唱歌で叙事詞の骨組みを持っているものが以外に少ないのです。これらの唱歌はもとの民話がすでに知られていることを前提に作られている場合が多く、歌を聴いただけでは民話の全体を知ることができないのです。

『桃太郎』は「桃太郎さん 桃太郎さん お腰につけた黍団子 一つわたしに下さいな」で始まります。この物語で重要であると思われる、おじいさんやおばあさんの存在や桃から生まれたという出生の秘密は語られません。いきなり雉、猿、犬の台詞からはじめられたら、知らない人はついて行きません。

『牛若丸(明四四)』は「京の五条の橋の上」で始まります。その後も牛若丸の素性(生まれ、生い立ち)は最後まで語られず、「鬼の弁慶あやまった」で終わります。橋の上での弁慶と牛若丸の戦いが描かれているだけで二人の素性はわからないのです。

これらの唱歌で歌だけで物語の全体像がわかるものは『モモタロウ』『うらしまたろう』『はなさかじじい』『うさぎとかめ』『一寸法師』『浦島太郎』『牛若丸(明三四)』になります。さらに、叙事詞としてしっかりした骨組みを持っているものに限ると『うらしまたろう』『浦島太郎』『牛若丸(明三四)』の三作品になります。


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by フリーダムミュージックスクール・東京高円寺作詞講座作詞教室

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