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作詞講座第二章 叙事詞はたいやきに学べ 17
それでは、起承転結に戻って、曲全体の構成をみていきましょう。
まず、「承」に注目してください。
「承」は十四行あります。
一番長い「承」のあいだ大きなストーリーの展開はありませんが、メロディの盛り上がりであるサビは二回出てきます。
また、一番と二番の間にあるブリッジ(間奏)の効果によって聴き手は一回仕切りなおしをしていますから、詞で大きな展開がなくても「承」の長さを感じません。
つぎに、「承」と「転」の位置とストーリーの展開に注目してください。
「起」の最後、つまりサビ前に最初の展開があり、「承」はサビからはじまります。そして、大きな展開である「転」があり、サビになります。
ここでは、詞と曲は一致協力して物語を盛りあげているのです。
このように、メロディと詞は時に補い合い、時に協力しながら、ひとつの歌をつくりあげていくのです。
起承転結のバランスはこのように曲の構成と深く関係しています。曲の構成が違えばそのバランスも違ってくるのです。
この歌が詞先(しせん)か、曲先(きょくせん)はわかりませんが、曲の構成と起承転結のバランスは完璧です。曲の構成が違う場合、変わることと、変わらないことがあります。
「起は短ければ短いほどよい」「結は終わりにあれば在るほどよい」この原則は変わりません。しかし、「承」と「転」の長さは変わることがあります。
「承」と「転」の長さは曲の構成以外にも、ストーリー展開でも変わる可能性があります。
以上、叙事詞における「起承転結」の原則は次のようになります。
①「起」は短いほうが良い
②「結」は終わりに近いほうが良い
③「承」「転」は長いほうが良い
④「承」と「転」の長さのバランスはストーリー、曲構成によって変わる。
⑤「起承転結」はメロディや曲の構成と大きく関わる。
次に、登場人物の「関わり」とその変化を明らかにするための要件、「いつ、どこで、だれが、だれと、なぜ、なにをして、どうなったか」に目を向けましょう。
イントロが終わり、歌が始まると、最初のAで主人公は毎日鉄板の上で焼かれていて、そのことで嫌気が差していることがわかります。
聴き手はここで、この歌が寓話のたぐいであることがわかります。
つぎに、ある朝「ぼく」が店のおじさんとケンカをして海に逃げたことがわかります。
この詞で、「ぼく」がじつは「タイヤキ」であることは、結末の手前まで一言も語られません。
しかし、曲のタイトルでそれはわかりますし、曲のタイトルを知らずに聴いたとしても、日本人ならば「タイヤキ」であると、容易に想像がつきます。
ここでわからなくても、この後の「おなかのアンコ」という歌詞を聴けば九割五分の人がわかるでしょう。
この短い「起」の部分でどれだけのことがわかるのでしょうか。
起 まいにち まいにち ぼくらは てっぱんの
うえで やかれて いやになっちゃうよ
あるあさ ぼくは みせのおじさんと
けんかして うみに にげこんだのさ
いつ…………ある朝
だれが………ぼく(タイヤキ)が
だれと………店のおじさんと
なにをした…ケンカをして海に逃げた
なぜ…………毎日鉄板で焼かれて嫌気がさしたから
どうなったか(結末)以外のすべてが、曲が始まってわずか十六小節の間に語られています。
叙事詞という短い物語の中では、早い時点で主人公の素性が明らかにされなければなりません。
主人公の素性が明らかにされなければ、聴き手は「共感」そして「感情移入」には入る準備が整わないからです。
このように、「起」の部分でたいやき(主人公)が店のおじさん(敵役)とけんかして海に逃げたことが明らかになっているので、聴き手は次の展開に耳を傾けることができるのです。
作詞講座第二章 叙事詞はたいやきに学べ 18
by フリーダムミュージックスクール・東京高円寺作詞講座作詞教室