作詞講座
作詞講座第一章 作詞の基礎知識 3
字足は作詞の大原則
というわけで、簡単に字足の説明をしましょう。だれもが知っていて、メロディの持つリズムがはっきりとあって、字足の説明に適した歌はないかしら、とさがしていましたら、ありました。
『お正月』(作詞 東くめ)です。
譜面をのせるのが一番早いのですが、おたまじゃくしを読める人は少ないと思いますので、なんとか譜面なしでやってみましょう。
『お正月』
一 もういくつねると おしょうがつ
おしょうがつには たこあげて
こまをまわして あそびましょう
はやくこいこい おしょうがつ
二 もういくつねると おしょうがつ
おしょうがつには まりついて
おいばねついて あそびましょう
はやくこいこい おしょうがつ
それでは、この歌詞の字足がどうなっているのか見て行きましょう。
一 もういくつ(5)ねると(3)おしょうがつ(5)
おしょうがつには(7)たこあげて(5)
こまをまわして(7)あそびましょう(5)
はやくこいこい(7)おしょうがつ(5)
一フレーズ(一節)ごとに下に字足を書いてみました。この歌詞が七五調で書かれているのがわかります。一行目だけ字余りで8(5+3)と5になっています。これはこの歌のメロディがそのようなリズムを持っているということです。
ターンタンタタ
もーういーくつ(5)
タンタンタン
ね る と (3)
タンタンタンタンタン
お しょう が つ (5)
読むだけではわかりにくいでしょうが、メロディを思い出して歌ってみてください。リズムと歌詞の関係が分かってきます。
それでは二番はどうでしょうか。同じメロディをくりかえすわけですから、字足も同じはずです。
二 もういくつ(5)ねると(3)おしょうがつ(5)
おしょうがつには(7)まりついて(5)
おいばねついて(7)あそびましょう(5)
はやくこいこい(7)おしょうがつ(5)
このように、同じ字足になっています。
つまり、歌の詞というものはそれぞれの歌のメロディ(が持っているリズム)に拘束された定型詩であるのです。
俳句のように、五七五という定型はありませんが、それぞれの歌のメロディによって、三三二六だの五三四二だのその歌ごとに決まった型があるということです。
もちろん少しの字余りや字足らずはメロディに合わせられますから問題ありませんが、どんな
無理でも通す強引な性格の人
でも
「もういくつねるとおしょうがつ」
のメロディに
「いったい後何回の夜と昼が過ぎ去れば正月を迎えることが出来るのだろう」
という詞をあてはめることはできません。
あたりまえですが、歌はメロディと歌詞からできています。
それでは、メロディに歌詞がついているのでしょうか。歌詞にメロディがついているのでしょうか。
答えは、どちらも正解です。
歌詞を先に作り、それにメロディをつけるのを「詞先(しせん)」メロディ=曲を先に作り、それに歌詞をつけるのを「曲先(きょくせん)」といいます。
最近の日本の音楽業界では圧倒的に曲先が多いのですが、どちらが正しいとか、どちらが良いとかいうことはありません。シンガーソングライターのように、一人で詞も曲も作る場合は同時進行でつくることもあります。
すでにできあがっているメロディに言葉=詞を当てはめていく作業は、作詞をしたことのない人でも、わかりやすいでしょう。
替え歌がそうです。
すでにある歌詞の一部あるいは全部を、字足をそろえて違う言葉に代えていく作業は、曲先で作詞する作業と同じです。できの良し悪しを問わなければ、誰にでもできます。違うのは印税が入ってくるかどうかだけでしょう。
素人が手も足も出ないのが詞先です。
さあ、歌の詞を作ってください、と言われても、素人はどう書いていいのかわからないでしょう。わからないまま書かれた歌詞にはメロディのつけようがありません。作詞の「きまりごと」を知らない人が作った歌詞にメロディをつけようとしても作曲する人はお手上げなのです。
作詞学講座第一章 作詞の基礎知識 4
by フリーダムミュージックスクール・東京高円寺作詞講座作詞教室