作詞講座第二章 叙事詞はたいやきに学べ 6

登場人物は二人ですが、年齢が不明なのでどんな役者を選んだらいいのかわかりません。

しかたがないので、子供と老人を除外して適当に選んだとしましょう。

しかし、大道具はどんなセットをつくっていいのかわかりません。部屋の外をコンクリートに(見せかけて)して、窓を一つ作ってブルーのカーテンを取り付けて終わりです。

小道具もインクのしみのついたテーブルクロスと花瓶を用意するだけです。それをどこに置いたらいいのかもわかりません。

衣装もコートとガウンを用意したところで悩んでしまいます。たとえ、舞台と役者を何とかしたところで、演出家は重要な問題に気づきます。

そうです、この物語には台詞がなかったのです。

ここまで極端に話を進めると、誰にでも芝居の「物語」と歌の「物語」違いは明らかにわかるでしょう。

歌における「物語」とは芝居における「物語」のある一場面を切りとったようなものなのです。

二人の男女の出会いと別れを描いた芝居があるとしましょう。二人の素性が明らかにされ、脇役も関わりながら物語は進んでいきます。

出会い、蜜月の日々、ある事件、すれ違い、男の浮気、女の猜疑、浮気の発覚、争い、別れ。

このように進んでいく舞台の別れのシーンだけを遅れてきた観客が見たらどうなるでしょうか。

『雨がやんだら』を聴く人と、芝居に遅れてきた観客は同じ状況に置かれているのです。

歌における「物語」がたとえ一場面を切りとってみているような不完全なものでも、観客はなぜ不満を訴えないのか。

前に書いたとおり、歌では観客は歌に参加して、細部を創りあげているからです。

それでは、ほとんど無意識的に行われる聴き手の心の作業を書きだして、その工程を追ってみましょう。


作詞講座第二章 叙事詞はたいやきに学べ 7



by フリーダムミュージックスクール・東京高円寺作詞講座作詞教室

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