作詞講座第二章 叙事詞はたいやきに学べ 5
ここで、歌における「物語」が芝居といかに違うのか、歌詞を例にみていきましょう。
とりあげるのは『雨がやんだら』です。
なかにし礼作詞、筒美京平作曲、朝丘雪路が歌った、すばらしい歌です。
この歌を聴いた人は確かな「物語」を感じることができるでしょう。しかし、「物語」を感じることはできますが、「物語」を知ることはできません。
それでは、この歌詞から登場人物と舞台設定に関して知りえる情報を整理してみましょう。
①主人公の性別 「お別れなのね」の歌詞から女性であると思われます。しかし、ゲイの男性である可能性もあります。
②主人公の名前 不明。
③主人公の職業 不明。
④主人公の年齢 不明。
⑤あなたの性別 主人公が女性であれば男性と考えるのが妥当と思われます。しかし、主人公が同性愛者であることを否定する文言は見つかりません。
⑥あなたの名前 不明。
⑦あなたの職業 不明。
⑧あなたの年齢 不明。
⑨二人の関係 一緒に暮らしていた。夫婦か同棲かは不明。
⑩物語の場所 主人公(わたし)とあなたが一緒に暮らしていた家。
⑪家の間取り 不明。ただし南側に窓がある。
⑫周囲の様子 「冷たい靴音」の歌詞から周囲が砂地や砂利道や沼地ではなく、コンクリート、石畳であると思われる。
⑬家の調度品 ブルーのカーテン。花瓶。布製の薄い色のテーブルクロス。
⑭着ている服 「あなた」はコートを着ているがその中は不明。「わたし」最後にガウンを着るが、それまでの服装は不明。
⑮当日の天気 雨のち曇り
以上が知りえる情報のすべてです。
物語の始まり(起)に必要な登場人物の素性は何もわかりません。
終わり(結)は明らかです。主人公である「わたし」と「あなた」が一緒に暮らした家から「あなた」が「誰か」の元へ去っていき、「わたし」はひとりになり、悲しくて泣き、未練から「あなたのガウン」を「まとってねむる」のです。
ここまで知りえた情報だけで芝居を作ることは可能でしょうか。
作詞講座第二章 叙事詞はたいやきに学べ 6
by フリーダムミュージックスクール・東京高円寺作詞講座作詞教室


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