作詞講座第二章 叙事詞はたいやきに学べ 2

一つは日本独特の問題です。これは後で詳しく書くことにします。

もう一つはポピュラーミュージック自体の問題です。

その問題とは、ポピュラーミュージックが本来持っている特異性とは何でしょうか。

歌の詞は小説や脚本とくらべると、非常に短い字数で書かれるジャンルです。3分から5分といった短い時間の中で、聴き手の「共感」を得なければなりません。

当然、複雑な物語や、人間関係を描くことはできません。

一つのオペラを無理を承知で一つのポピュラーソングにするとしたら、大まかなあらすじを追って終わりです。誰の共感も得ることはできないでしょう。

歌にも「物語」は必要です。しかし、小説や芝居、あるいはオペラやミュージカルに人々が求める「物語」と、人々が歌に求める「物語」は違うのです。

的確にいえば、「物語」と観客=聴き手=読者との関わりが違うのです。

それでは、芝居と歌との比較をしていきましょう。

小説は表現が多岐にわたるジャンルですので、ここでは除きます。また、ここでいう芝居とは、ミュージカルやオペラはもちろん、歌舞伎や文楽など、脚本に基づいて生身の人間及び人間が操作する人形が舞台上で演じる芸能すべてを指します。(ただし、観客を巻き込むような前衛的な演劇は除外します)

芝居における観客の存在は、過去を覗き見る「タイムトラベラー」に良く似ています。

ある劇場の舞台で芝居が行われている時、客席の観客は舞台上からは、「いないもの」としてあつかわれます。実際の問題として、観客の反応や多少によって役者の演技に変化があることは当然でしょうが、原則としてそうなのです。

観客が一人でも千人でも、始まった芝居は必ず終わります。内容が変わったり、結末が変わったりすることもありません。観客が芝居に直接かかわることは禁じられています。

台詞に反応して、役者を罵倒したり、役者を激励したりしてはいけません。役者も客席の入りぐあいに合わせて、立ち位置を変えたりはしません。

もちろん、役者が観客を舞台に呼んで上がらせたり、芝居中に観客に握手を求めたりもしません。

歌舞伎や大衆演劇などでは、芝居中に掛け声をかけたり、拍手をしたりしますが、新劇ではそれもありません。

拍手や掛け声をかけられたとしても、芝居中はそれに答えることはありません。

能では正式には一切拍手をしてはいけない、とされています。

そして、あたりまえかつ重要なこととして、役者はそれぞれの役によって、名前や年齢や役者同士の人間関係が決まっています。

作詞講座第二章 叙事詞はたいやきに学べ 3




by フリーダムミュージックスクール・東京高円寺作詞講座作詞教室

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