歌の上手い下手って、いったい何?
歌の上手い下手とはいったい何なのでしょうか?
もちろん、正しい音程、良いリズム感、感情表現、ノリなどなどでしょう。
でも、それだけなのでしょうか?
野坂昭如の歌ははっきり言ってうまくありませんでした。でも、彼の歌を聴いて感動した人はたくさんいます。小沢昭一もしかり、決してうまいとはいえませんが、いまだに昭和歌謡を歌い続けています。そして、やはり聴くと感動するのです。
越路吹雪という人は音程が良くありませんでした。でも、彼女はスターでした。それは、たぶん類まれな感情表現から来ていたと思われるのですが、音程が悪くてもいいのでしょうか?
クラシックのソプラノ歌手やテナー歌手がポップスを歌うと、違和感を感じることが多々あります。正しい音程、良いリズム感、感情表現も豊かです。そこに足りないものは何なのでしょうか?
ロックやポップス歌手の中にはわざと声をつぶして歌う人もいます。それは正しい発声ではありません。でも、それで聴く人は感動するのです。
一つだけ言えることがあります。歌の上手い人は例外なく朗読が上手いということです。かつて、ビリー・ホリディが“I Love You”たった一つのせりふを何十種類にも言い分けたという伝説があります。
歌というものは、言葉にメロディがついたものだと私は思っています。
しかし、歌の下手な人はメロディに言葉がついている、と思っているようです。というか、メロディに音、つまり、あーとか、えーとか、きーとか、一つの音程に一つの音がのっているとしか理解していないように聴こえるのです。
当然、そういう人の歌は音の羅列なので、言葉が心に響くことはありません。
私はレッスンの中で、先ず歌詞を朗読してみましょう。と薦めることがあります。ところが、これができないのです。
恥ずかしさもあるのでしょうが、「I Love You」という感情的な言葉さえ棒読みになってしまう人がほとんどなのです。
歌の上手い下手、しいては言葉を人に伝えて感動させる能力とは、実は朗読する力と深い関係があるのではないか?
これが私の仮説です。