作詞講座第二章 叙事詞はたいやきに学べ 18
続いて「承・転・結」をみていきましょう。
承 はじめて およいだ うみのそこ
とっても きもちが いいもんだ
おなかの アンコが おもいけど
うみは ひろいぜ こころがはずむ
ももいろサンゴが てをふって
ぼくの およぎを ながめていたよ
(間奏)
まいにち まいにち たのしいことばかり
なんぱせんが ぼくの すみかさ
ときどき サメに いじめられるけど
そんなときゃ そうさ にげるのさ
いちにち およげば ハラペコさ
めだまも クルクル まわっちゃう
たまには エビでも くわなけりゃ
しおみず ばかりじゃ ふやけてしまう
「承」の部分では物語の大きな展開はありません。展開はありませんが「脇役」が登場し「舞台」が変わり、主人公の「行動」と「感情」が描かれます。
登場する脇役 ●ももいろサンゴ ●サメ ●エビ
舞台の変化 ●うみのそこ ●なんぱせん
行動 ●およぎ ●いじめられ ●にげ ●はらがへる
感情 ●きもちがいい ●こころがはずむ ●まいにちたのしい
転 いわばの かげから くいつけば
それは ちいさな つりばりだった
どんなに どんなに もがいても
ハリが のどから とれないよ
はまべで みしらぬ おじさんが
ぼくを つりあげ びっくりしてた
(間奏)
やっぱり ぼくは タイヤキさ
すこし こげある タイヤキさ
「転」は大きな展開です。前にも書いたとおり、この歌において「転」がサビ前の位置にあることが重要なのです。大きな展開とメロディの盛りあがりであるサビが一体となり「物語」を最大のヤマ場をむかえるのです。
結 おじさん つばを のみこんで
ぼくを うまそに たべたのさ
この歌はAABA形式ですから、Aメロがでてこなければ終止感がありません。当然「結」はAメロとなり、静かに終わるのです。
このように『およげ!たいやきくん』は叙事詞の教科書のように、叙事詞はかくあらねばならない条件をすべて持っています。
「起」は短く、主人公の素性と置かれている状況が的確に語られ、「結」は終わりにあり、「承・転」は長いが曲の展開とあいまって聴き手を飽きさせません。
日本のポピュラーソングの中でこの歌に匹敵する叙事詞はほとんど見あたりません。これこそが、突然変異的名作である所以なのです。
『およげ!たいやきくん』の叙事詞としてのすばらしさは展開の妙だけにあるわけではありません。こまかい表現に目をむけ、さらにこの歌を分析していきましょう。
作詞講座第二章 叙事詞はたいやきに学べ 19
by フリーダムミュージックスクール・東京高円寺作詞講座作詞教室
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